月: 2018年6月

光る風 / 山上たつひこ

当時の社会情勢を巧みに反映させ、軍国主義の台頭とその恐怖を描いた内容は読者に強い衝撃を与えると同時にポリティカル・サスペンスをいち早く手掛けたことによって、高い評価を受けた。

全三巻。これも謎の無料配信の時に入手した。

結論から言うと、結構面白かった(・∀・)
多分、これが連載されていた1970年当時に読んでいたならば、世界情勢とのリンク等々から、その虚構世界により強い衝撃を受けたのかもしれないけれども、米ソ対立も反共も今は昔、せいぜい資本主義 vs 社会主義や共産主義を詐称する資本主義もどきと言った今の時代ではただの過去のポリティカル・フィクション作品という印象。

物語の始まりは奇祭というか裸祭というか。「新堂エルの文化人類学」じゃないよ(*´・ω・)

なんか昔色々あったらしい


内容は面白かったけれども、この作品名をぐぐった時にやけに"予言"とか"現在を予見した"みたいな評価が見受けられることにはいささかの違和感を覚えた。

海外派遣の部分に関しては現実のPKOとは全く異なる戦前の軍国主義に根ざしたもので、形こそは似ていても内容は全然違う。

愛国心云々は現実にはせいぜい安倍首相界隈しか唱えてないし、どちらかと言えばゲバ棒からポリコレ棒に持ち替えた攻撃的排他的独善的"博愛主義者"達の方が害悪のような気がする。まあ綺麗事を唱え続けて似たような人達とお祭り騒ぎすることほど、孤独感を払拭出来る、お手軽で中毒性の強い承認欲求達成ドラッグはないから依存しちゃうんだろうけど。まあこれは左に限らず右にも言えることかw

今時の若いもんは的なモノと同様に何時の時代でもありそう

ちょっと笑ってしまったw 今はLGBT関連にも侵食してるからこんな表記は出来ないよなw ちなみにこれとは全く違うオカマ爆弾(gay bomb)という物を開発しようとしていたらしい(ノ∀`)

地震に関しては、日本だしねとしか言いようがない。あれは物語を終わりに向かわせる為の装置というかイベントに過ぎないんじゃないかな。

俺氏もそうだけれども、人は見たいように物を見ようとし、理解したいように理解しようとする。どんな形態の作品であれ、正確に言えば世のあらゆる事象であれ、基本的にその傾向は変わらない。つまるところ、作者がそこまで狙って描いていなくても、読者は自分が解釈したいように解釈する。

それが作者にとって賑やかしの為に何気なく撒いた普段使いの茶碗の破片だったとしても、拾った人によっては「これは名工が作った傑作の欠片に違いない、世紀の大発見だ(・∀・)」と思うのであれば、それはその人にとっての事実や感想であり、他者が否定すべきものではないのかもしれない。

だけれども、作者が未来を描こうとしていたわけではなく、虚構世界(その中の多くは現実世界をそのまま模写している)に於いて論理的破綻をしないように物語を構築した結果が、現代の現実世界の物と似ているように見えるというだけで、未来を予見していたというのは少し安易過ぎるような気がする。もっと言ってしまえば、ノストラダムスの大予言を信じようとする曲解や防衛機制的合理化の類が発動しているように思える。

まあ実際のところ、山上たつひこが何を考えて描いていたかなんて俺氏は知らないので、そういう風に描いていたのかもしれないけども、俺氏にはただのif物にしか思えなかったなぁ。

ここだけ切り出すのはあれだけど、所詮"平等"とか"平和"とか"正義"とかって、結局はただのポジショントークだからねぇ(・∀・)


一見すると愛国心やら軍国主義に対峙する主人公と言った左翼思想的な内容に取られてしまうのかもしれないけれども、何となく左右の話じゃなくて、国家権力や全体主義と個人という構図の方がメインのように思えた。左翼的要素はあるにはあったような気はするのだけれど、ちょっと弱いというか、左翼を称賛しているわけでもなく、主人公の弦に思想らしい思想も見受けられなかった。弦に関して言えば狂言回し的主人公であったような。

今までの歴史に現れた、数々の名前だけのエセ社会主義やエセ共産主義の国々も、実際には権力闘争に明け暮れ、手に入れた権力を以て独裁し庶民(個人)を虐げる現状を踏まえれば、軍国主義やら独裁主義と何の違いもない。その間に違いがあるとすればそれは唱えてる文句が、振り上げているその腕が左右異なる程度のこと。鏡に写って左右反転してるだけの同一個体。

若かったとはいえ、そんなことを踏まえずに山上たつひこが青い内容を描くとはちょっと思い難い。

やはりこれは、戦前の日本や当時の世界情勢をベースにした、権力vs個人(勝負にすらなってないが)やポジショントーク的"正義"等の思考実験的ポリティカル・フィクション作品なんじゃないかなぁ。

俺氏も漏れそうな時に何とかトイレに辿り着けた時はこんな顔をしている(´・ω・`)マダユダンシチャダメ

この漫画では、異常な愛国心(考えてみたら天皇崇拝とかの戦前の右翼的思想の特徴は特になかったな)について描かれていたが、行き過ぎた思想や思考や宗教はどれも"虚像との愛撫"にしか過ぎないよね(´・ω・`)


当局からの圧力を受けた等の打ち切り説もあったようだけども、どうかねぇ?
六高寺家のパートが終わった後、ストーリー的にこれ以上の広がりようがないような気がしたので妥当な終了のような気がした。

まあ左翼称賛とか軍国主義打倒をメインテーマにしているのであれば、倒幕ならぬ倒政(革命?)展開も出来なくはないけれども、余り現実的ではないしなぁ。

"権力"というモノとそれに対する人間の執着をメインテーマにしているならば、革命後の凄惨な粛清や権力闘争まで描ききればいいのだろうけれども、やはり革命自体が無理筋だよな。米軍の介入や核なり生物兵器を使われて日本壊滅エンドが待っているだけだろうしなぁ。

そう考えるとこの終わり方で良かったんじゃないのかねぇ……とか言いつつ、実は俺氏、最終回の弦の言っていることを一分も理解できていない(ノ∀`)ムズカシイ

お手伝いの雪さん。ちょっとミニスカート過ぎませんか(*´・ω・)?

最後まで名前はわからなかったが、やけに哲学的というか物分りの良い男だったw ちょっと好きw


まあ一読の価値はあるんじゃないかなぁと思いました(・∀・)(小並感)

関係ないけど、昔、同名のゴルフ漫画があったような気がする( ・´ω・`)