カテゴリー: 本・雑誌等

記憶力を強くする / 池谷裕二

大脳生理学を専門とする著者・池谷裕二氏による記憶について書かれた一冊です。
前回読んだ進化しすぎた脳よりも6年ほど前に書かれたものです。
そのため、内容的にはかぶっていたり、古いかなと思ったのですが、
この本は記憶の仕組みとその大部分を司る海馬について書かれており、
「進化しすぎた脳」とは異なる面白さがありました。

同一性を保つために増殖しない神経細胞の中、唯一増殖する海馬の「顆粒細胞」、
「意味記憶」と「エピソード記憶」の違い、記憶を形成する「シナプス可塑性」「増殖」「発芽」、
「LTP」と「LTD」、「記憶」と「ストレス」「夢」の関係などについてわかりやすく書かれています。
神経細胞の使いまわしが連想や創造を産むという点が特に興味深く、読んでいて
興奮を覚えましたε===ヽ(*゚∀゚)ノエウレカ !!
実際に記憶力を高めたい人でもそうでない人でも読んで面白い一冊です。

若い頃に人間機械論的なことや悲観的な考えや考えがループするのは脳内にある種の
溝というか電気というか思考が流れやすいルートが形成されるんじゃないかなどと
考えていましたが、明確ではないにしてもなんとなくの答えを得られた感じです。

ペンギンたちの不思議な生活 / 青柳昌宏

ペンギン研究者であり、NGO「ペンギン基金」主宰者であった青柳昌宏氏による一冊。

「ペンギン」の名がスペイン語「ペングウィーゴ(太っちょ)」から由来したと言われるのも
納得できる愛らしいその体形、海中飛翔のために羽から変化したフリッパー、
「恍惚のディスプレー」、「やかましい挨拶」、「クレイシ」、「礼装」、「ヘッドモルター」などの
ペンギンにまつわるさまざまなことを分かりやすく説明されています。
今までただ可愛いだけと思っていたペンギンたちが過酷な自然環境の中で生き抜く為に
あのような生物に進化したのかが分かります。

『ペンギンもクジラも秒速2メートルで泳ぐ―ハイテク海洋動物学への招待 (光文社新書)』も
合わせて読むと面白さが深まって良いと思います。
こちらはどちらかというとデータロガーという機器による研究をメインにした一冊です。

進化しすぎた脳 / 池谷裕二

大脳生理学を専門とする著者・池谷裕二いけがやゆうじ氏による、
脳について書かれた一冊です。

主な内容は慶應義塾ニューヨーク学院高等部で四日間行った脳科学講義の記録です。
実際に行われた講義の記録の為、対話式でとても読みやすく、
理解しやすい感じになっています。
普通の脳科学本の堅苦しさに挫折・敬遠した人にお薦めだと思います。

神経細胞上を伝わっていく「スパイク」の仕組み、
グルタミン酸を放出するシナプス・「GABAを放出するシナプスによる合議的「発火」
人間の体のさまざまな部位の機能が、大脳のどこに対応しているかを表す「脳地図」
大脳皮質の表面積の比で体を表した模型「ホムンクルス」
「あいまいな記憶」とその目的、「意識と無意識」、「脳の解釈」など、
非常に興味深い内容です。
 


この本を読んで、大した根拠もなく書いたエントリ(「人」というものについて考えてみる)もあながち間違いでは無いような気がしてきた(・∀・)

カラスの早起き、スズメの寝坊 / 柴田敏隆

著者は横須賀市博物館学芸員、(財)山階鳥類研究所資料室長を勤めた柴田敏隆氏。
肩書きはコンサーベイショニスト(自然保護に、話のわかるプロとして携わる人、の意)。
コンサーベイショニスト、柴田敏隆先生の文化鳥類学

単純に鳥の説明に終始するような内容ではなく、さまざまな分野と
鳥を絡めた楽しく読めるエッセイでした。
自然保護を強調している部分も多々ありますが、盲目的自然原理主義的な
薄っぺらい主張とは異なるので、余り気にはならないと思います。

寺田寅彦の「とんびと油揚」について触れた「鵜の目鷹の目」、
思春期の自己愛とその行動について理解を示しているとも言える「ツッパリの原点」、
現代日本の自然史的常識の欠如を憂う「卵歯」「フクロウの足」、
そのほか、「一富士二鷹」「リンの運び戻し屋」「海水を飲んではいけない?」など、
興味深い話が多数収録されてました。