友と友の間 / 菊池寛

久米正雄、松岡譲と夏目漱石の娘・筆子の恋愛事件について、菊池寛の視点から書かれた作品。

序盤は菊池寛の分身たる木村雄吉の、松本藻石(夏目漱石)と京都帝国大学時代の恩師である中田博士(上田敏)に対しての思いが綴られ、藻石の死去から物語は本編(?)へと突入する。

終盤以外では基本的に情報ソースはほぼ久野(久米正雄)であり、そういった点で恋愛事件に関しては若干久米視点に偏っているものの、久米正雄の『破船』とはベクトルが異なり、終盤での杉村(松岡譲)との会話により事件の立体化がなされ、また、ある種辟易している久米の弱さに対する菊池寛の冷徹な思いがしばしば吐露されており、『破船』を読んだ後に読むと非常に面白いw

より一歩踏み込んで言えば、『破船』の後にこの『友と友の間』を読むことによって、読者の中で二つの作品は一つの名作へと昇華すると思うw

松岡譲の『憂鬱な愛人』は未読なので何とも言えないが、少なくともこの二作品を併せて読むだけで味わい深い何かを感じられた。


尚、菊池寛は『神の如く弱し』においてもこの事件のことを扱っているが、これは短編で、この事件のごく一部分の切り取りであり、久米正雄の弱さをフィーチャーした作品であった。これは青空文庫で読めるが、『友と友の間』の後に読むほうがいいかなぁ?

『破船』を読む限りでは、久米正雄の分身たる小野は若干迂闊なところがあるが、誠実なまともな青年に思えるのだが、今作品と『神の如く弱し』に目を通した後に思い返すと、
正雄さん、ちょっと自分を美化しすぎか、自己認識が弱くございませんか(・∀・)?と思わぬこともないw


木村雄吉、つまりは菊池寛のこの事件に関する最終的な結論は、
「誰も悪くない」
であり、その結論に至る過程の思考についてはほぼ首肯できるものであるが、この事件に関しての俺氏の見解は、

→ (ネタバレを含む)
みんなそれぞれちょっとずつ悪い(・∀・)

まあでも現実の人間社会って往々にして、そんなもんだしね(´・ω・`)ニンゲンダモノ

※作品内の名称と本名が入り混じってしまったがキニシナイ( ゚ 3゚)♪~

  • 久米正雄に関しては、色々と軽佻浮薄であり、少しが間が抜けすぎてて、感情の制御能力が乏しく、人に依存しすぎである。
     
    7歳の時に父が割腹自殺し、その後、移住した先で姉も肺患いで失ってしまっているらしいが、久米がやけに女性や恋に依存的であったり、色々と不安定であったのは、そういったことも関係あるのだろうか。 筆子が年下なれど長姉であったことも惚れて執着する要素の一つだったのかもしれない。
  • 松岡譲は、『破船』で記載されている鳩の拉致が創作だったとしても、写真の受け渡しや偽手紙などの悪戯を鑑みると、頭が良い所為なのか性格的にちょっと人や物を軽んずる部分が強いように思える。
     
    久米正雄との友情は確かにあったのであろうけれど、それは若干、久米正雄を下に見て、"いじり"の対象と認識しているようにも思えた。故に、本人(杉浦、杉村)が否定しつつも、作中内における行動に嫉妬の影、下剋上的力関係の逆転への動揺を感じられた。
     
    また、作中内では雄吉に妙子との結婚に及び腰な発言の中で故郷云々に触れているが、実際のところは両親との義絶甚だしく、寺の継承などは頭の中には毛頭もなく、寄る辺なき身の不安さを松本家の女婿になることで解消しようという考えも確かにあったのではなかろうか。

    まあ、それ自体はある種、下衆な考えに思えるが、それほど絶対的なものではなく、選択肢の一つ、未来の一つとしてぼんやり思っていたところに、妙子と長く触れ合ううちに愛着が生まれ、更に妙子から恋心を打ち明けられ、総合的に妥当な判断、行動をしたのかもしれない。

    あと、久野に妙子のことをどう思ってるかと聞かれて、何とも思ってないと話していたが、これも本当にどうだったのかはわからないw
    意識はしていなかったが、憎からず思っていたとしても、杉村の性格上、スカしていた可能性も否定できないw
    あるいは杉村の友情上でそう言っていた部分もあるのかもしれない。

    まあ、久野の執拗な質問や前述の嫉妬的な部分によって、妙子が杉村の意識上に上がり、それが誘導、"地馴らし"へとつながったとも言えそうではある。

  • 夏目筆子は、うーん、まあ、まだ若い女学生で、父の死間もないこともあり、色々情緒不安であった部分もあるのかな。加えて言えば女傑っぽい夏目鏡子という母親の影響力も強かったみたいだからねぇ…
     
    作中で杉村が認めている通り、久野に対しての好意は皆無だったわけではないだろう。
    ただ、杉村と近づく為に久野に優しくしたとか、杉村とは結婚出来そうにないから、せめて友達の久野と結婚しようとしたという言質は後付っぽい気がしないでもない。

    だってそうじゃないと
    久野が可哀そすぎるじゃん(´・ω・`)

    まあでも年齢的なことを考えれば、娘18、箸が転がっても秋の空ですよ(・∀・) ←自分で言っててよくわからない

    炬燵内お手々ニギニギ事件については良く判らないw
    後に筆子は否定しているらしいが、実際のところはどうだろうか。
    久米松岡筆子に限らず、人間は自分の現在を肯定するために記憶の改竄や理由付けをする生き物だから、何とも言えない。もっと言えば人間は脳内世界で本当に思っていることをそのまま外世界に出せるのだろうかという疑問もあるので。

    いつだって真相は炬燵の中(´・ω・`)よ…

    まあドジっ子の久米正雄だから、何か違うモノを誤認してそう思った可能性も否定できない(・∀・)

  • 夏目鏡子…実はこの恋愛事件の黒幕というか、最も大きい原因存在なのではなかろうかと思ってるw
     
    鏡子が漱石亡き後の男手不在の夏目家において、長男・純一が継ぐまでの繋ぎとしての番頭を求めたことが全ての発端のように思えてしょうがないw
     
    初めは御しやすい久米正雄を、本人の希望も取り入れて選んだが、失点も多かったのだろうか、才気煥発な松岡譲を頼りになる男と認識した後、筆子の希望も汲んで、最終的に久米正雄の放逐へと流れてしまったように思えてしまったのだけれども、実際のところはどうなんだろうかw

    まあ、こう書くと、夏目鏡子が凄く悪辣非道な人のように思えるが、夏目家という文学界の大きい王国の王が崩御し、跡継ぎは幼く、周りにいる重臣・貴族(古き門下生達)はうるさ型のくせに頼りにならず、信用もできない状況下で、忠誠心強く、王室を支えてくれる騎士を求めることは、残された女王の選択としてあながち間違いとは言えないと思えた。少なからず強く責め立てられるものでもない。つーか、久米正雄がもっとしっかりさんだったら…(´・ω・`)

    そういえば、罪悪感や慰藉のつもりかわからないか、『神の如く弱し』では、病に倒れた河野(久米正雄)に対して、夏目家が人を通じて金銭的援助を申し出ていたりもしている話が出ている。まあ、この出来事が実際にあったことなのか、フィクションなのかは判らないのだけれどもw

    一応、1919年2月下旬頃にこういったことはあったようではあるが。
    久米は流行性感冒から肺炎まで行った感じだったのかな?

まあそういうことですので、この恋愛事件の登場人物で咎なき人は菊池寛とカメオ出演レベルの芥川龍之介と成瀬正一だけになりますかねぇ(・∀・)
 
 
 
ん…ちょっと待てよ……(´・ω・`)
筆子が松岡譲を意識したのは漱石の通夜だか葬式で松岡が受付を一人ぼっちでやってた時のことだよなぁ…
 
 
 
あれ?
まだまだ夏目家と親しくなく、その危篤の時に行って良いものかどうかと逡巡していた松岡を、自分の社命のために背中を押した新聞記者が確かおったよなぁ……

あいつが余計なことしなければ、筆子と松岡の恋愛的邂逅は発生せず、久米ルートエンドの可能性もあったよなぁ…
 
 
 
まあ、いいか(・∀・)
葬式時から参加していても、受付やってたかもしれないしな…

である。


→ お金をかけずに『友と友の間』を読むには
尚、『友と友の間』は国立国会図書館デジタルコレクションの菊池寛全集 第三巻、または友と友の間 (金星堂名作叢書 ; 第5)で読むことが出来る。

俺氏は後者の方を選択してしまったが故に若干苦労した(ヽ'ω`)
何故なら後者のバージョンは文字の消失や補修とその当時の読者の書き込み等で読みにくくなっていたからであるw

後に前者の存在に気づき、消失部分を確認することが出来た(・∀・)
少なくとも一箇所、文言が違うところがあったな、そういや。


で、まあ古い本なので旧字体である。青空文庫にもなかったので、
「ずっと無職でタイピング能力も落ちてるから、その練習がてら、
ついでにテキスト化しとくか(・∀・)」と思い立ち、読み取ることの出来たかつての読者の書き込み含みでテキスト化した。

一応出来るだけ、底本(?)の仮名遣いや旧字体で入力したが漏れ等々があるかもしれない。
尚、ベースは金星堂版であるが、読解不能な部分、明らかな誤植等は全集三巻の内容に従っている。

当初、それをそのまま公開しようと思っていたが、
「これこのままじゃ読みにきぃなぁ、もっとこの作品を広めるためには適当に現代文っぽくしちゃうか(・∀・)」と送り仮名の追加や漢字の平仮名化を施してHTML化した。

具体的には、
積り→つもり
貰う→もらう
居→い
一寸→ちょっと
就いて→ついて
等々。

意図的に平仮名化していない部分もある。
筆致そのものや文章から受ける印象はおそらく変わっていないと思う。
つーか元々、菊池寛の漢字使いも必ずしも一定ではないので、それほど問題はないかと思ったのでやってやった(・∀・)ヤッテヤリマシタトモ

あと、ルビを振ってるが、本当にその読みが正しいかどうかは知らないw
何となくで振った(・∀・)

注釈は無駄に多くの単語につけてしまった…
暑さとこの作業のために2週間以上公開が遅れた(ヽ'ω`)

注釈をつけた単語(8-9割付いてるかも)は若干、色が薄い(#404040)かルビが振ってあるので、それをクリックorタップすれば、上の部分に表示される。この辺の仕組み等々、改良しなければならないところが多々ある。詳しくは下記にて。尚、ルビを振っていても注釈がないものも幾つかある。

注釈に利用したのはずっと前に買って、使い勝手が悪いというか、PCユーザーからすると操作体系が合わずに放置していたカシオ XD-SX6500GDに収録されていた『広辞苑 七版』。広辞苑でカバーしていなかった、或いは説明がそぐわなかった数単語を『明鏡国語辞典 第二版』『新漢語林 第二版』『ジーニアス英和辞典 第5版』から取った。つーか、XD-SX6500GD、生産終了後の絡みか、amazonで33000円強するんやな…俺氏は2万弱で買ったみたいだが。


菊池寛の著作権は切れているので、この改変、公開等について権利的な問題はないと思われるが、何か寡聞ゆえの未知の問題が存在して怒られたり、夜中、寝苦しくてうなされて目覚めたら、胸の上に菊池寛の胸像がのしかかっていて、怖い形相でこちらを睨みつけてる等の怪異現象が起きた場合には公開を中止する(´・ω・`)ソンナン、コワイモノ

現代文に寄せてHTML化したもの。
菊池寛 『友と友の間』

こちらは旧字体のテキスト。ルビや傍点は"<<>>"で対象部分の後に追記している。

非営利ならば、このテキストは自由に扱ってもらいたい。 ← 元々、原文は俺氏が書いた文章じゃないしね…( ゜σ・゚)ホジホジ

何故ならもっと色んな人に破船事件について知って欲しいからw
同時に古い文学小説の全てをお堅い、小難しいものと思って敬遠しがちな人々にも、必ずしもそんなことはないぜと伝えたいので。


底本を金星堂版にしたが為に読解に苦労し、「書き込みなんてすんじゃねーよ、バーヤバーヤヽ(`Д´)ノ」とか思ったものの、最後までテキスト化した今では、ちょっとだけ、この書き込みのある方に最初に行き着いて良かったと思ってるw

尚、書き込みについては一応"*"として載せているので、注釈同様にクリックorタップをしてもらえば読むことが出来る。
但し全体的にくずし字等や重ね書きが多く判読不能なもの等が多く、もしかすると間違えて記載してるものもあると思われる。
完全に判読不能なもの、注釈へ統合したもの、意味不明なものについては割愛した。

おそらく大正~昭和初期に読んでいたであろう人達の赤裸々な感想が読めたからである。(もっと時代が進んだ人の書き込みも混じっているかもしれないが、いずれにしても今ではない、それなりに昔の人達だと思われる)

この作品内で書き込まれた内容は現代でも繰り返される、久米派vs松岡派(夏目家派)の互いへの中傷となんら変わりがなかったw

最終的に久米と松岡は仲直りして、旧交を温めた後に二人とも旅立って行ったのだから(若干、なんか後を引いていたようだけどw)、少なくとも、当事者関係者でもない、当時の読者でもない、外野も外野、球場でのライブコンサートに入れず、漏れて来る音楽を微かに盗み聴いているだけような我々現代の読者は、もうそういうのはやめとこうぜとちょっとだけ思ったw

→ 技術的或いはもっと大きな枠組みでの課題について
  • 注釈表示の仕組みを、JQueryを使わないで、Javascriptで書き直したい。これはhtml単体かつオフラインで利用出来る完結した形態にしたいということ。今時オンラインじゃない環境なんてないけれど、オフラインで利用できるようにしときたい。まあ、そのうちね(´・ω・`)
  • 当初、PCでの利用しか想定していなかったので、えらく適当に作ってしまったが、スマホとかiPadで読もうとすると、かなりユーザー体験が悪いw 拡大表示した時とか。これもまあ、そのうちね(´・ω・`)
  • ユーザーが文字色や背景も変更できるようにはしたい。出来そうな気はするが、面倒くさそう(´・ω・`)
  • ページネーションの問題。今の絵巻物状態だとどうもよろしくない。スマホやiPadでの画面拡大を利用すると色々と期待通りにならないのもあるし、一般的な紙本読者の感覚では、表示部分を読み終えたら、ワンタッチで次ページに進む方が感覚的には馴れているはず。せめて章単位での表示にすべきか…うーん(´・ω・`)
  • 当初は注釈はhoverで表示させていた為、一回注釈を仕込んだ単語にはルビも注釈表示もつけないようにしていたが、clickに変更したので、全てにつけてもいいのかなと思いつつ、取り敢えずそのままにした。尚、なぜhoverからclickに変更したかというと、PCでそれをやってしまうと、注釈表示する単語が多数あるページで、文量の多い注釈を縦スクロールするためにカーソルを移動させるのに、電流イライラ棒並みの細かいマウス操作が必要になってしまうことに気づいたから(ノ∀`)
  • ルビの表示もオンオフできればいいなと思うが、Javascriptでrubyタグ等を除去するのも力技すぎる感じ。文字のカラーを背景のカラーと一緒にすればいいかとこれまた小手先の技でなんとかしようと思いつつ、まあ、そのうちね(´・ω・`)
  • 注釈付けにVCSを使ってやったが、やっぱり辛かった(ヽ'ω`) どうにか良いツールを探さねば…そもそも適当に後から注釈をつけていく手法に問題があった。途中で方針変更を繰り返したのが原因である。最初に単語の洗い出しをするべきであった。専用のツールでも作れればいいのだが…
  • 上記の点の改良等をしたいところではあるが、俺氏にはこれ以外に3Dプリンタで遊びたかったり、国会図書館デジタルコレクションで発見してしまった『破船』と『憂鬱な愛人』の文字起こしがしたかったり、100本近く溜まってしまった映画の視聴記録エントリを作成したいので、今は着手できない(ノ∀`) 尚、本当は先に未読の『憂鬱な愛人』の文字起こしをしたいが、『友と友の間』の前に『破船』を読んでもらいたいこともあり、『破船』の作業をしばらくしたら開始する予定(`・ω・´)マア100エンデカエルサクヒンダケドネ
  • 文字起こしは画像OCRでもっと簡単に出来るのだろうか? 金星堂版は余りにも状態が酷すぎてあれだったがw

何はともあれ、読んで良かったです(・∀・)(小並感)