カテゴリー: 本・雑誌等

東電OL禁断の25時

酒井あゆみ(著)

元風俗嬢で「東京夜の駆け込み寺」の著者が1997年に起きた東電OL殺人事件について書いた本。

被害者の女性と一時同じホテトル事務所に所属していたらしく、ホテトル嬢としての被害者女性についてと元風俗嬢から見たこの事件について記されている。

元風俗嬢としてその心理や奇行を説明しているが、ある程度までは首肯出来るが、それ以上はちょっと首を傾げてしまうような牽強付会な論理のような気がしたw

この事件についてぐぐると、「東電社員であり反原発派の父親の遺志を受け継いで頑張った為に殺された」みたいな陰謀論がヒットするが、うーん、まあ、さすがに殺されるってのはおかしな気がするw
干されたりしていた可能性は否定出来ないが。


あんまり触れられていないけれども、この被害者女性と母親の関係や、育って来た家庭がどんな感じだったのか気になるなぁ(´・ω・`)

あくまでも仮に、あくまでも仮にであるが、被害者女性が母親と上手くいっていなかった場合、例えば母親が支配的な毒親であり、父親のみが救いであった、或いは被害者女性と父親との結びつきが極度に強すぎたのなら、なんとなく転落の流れも理解できなくもない。
対象喪失の衝撃に耐えられず、徐々に壊れていく場合があるから。

快楽殺人犯などが自分を愛してくれる(存在価値を供給してくれる)庇護者を失ったことがトリガーになっておかしくなっていくように。この人は小動物の殺害やその他の犯罪の傾向がなかったからそういった加害者側にはならなかったけれども。

あと最後の方の奇行は明らかにアルコール依存症が進行しつつあったんじゃないかなぁとも思った。


事件から20年弱も経ち、犯人とされたネパール人も冤罪であったという結末。
全てが闇の中に消えていくのか(´・ω・`)

東京震災記 / 田山花袋

1923年9月1日に起きた関東大震災について、自身の体験や被災者から聞いた話を
まとめた作品。田山花袋と言えば、変態私小説「蒲団」のイメージしかなかったが、
この作品はとても興味深い内容であった。

こんなことを言うと田山花袋が墓から跳び出てきて思いっ切りぶん殴られそうだが、
随所に入る文学的表現や自作品からの引用等は読むのがちょっと煩わしかったw
その辺を考慮しつつ読むのであれば良い被災体験記であったと思う。


東京の下町方面や皇居周辺の地理は余り詳しくないので、今ひとつピンと来なかったが、
基本的にほぼ全部が焼失したのだけはわかった。持ち出した家財道具に執着したが為、
火災の広がりを甘く見たが為に命を失ってしまった人も大勢いたようだ。家財道具を
載せた大八車や多数の人間が橋などに集中し、身動きが出来ない状態になったまま
火の手に囲まれたらしい。火を避ける為に川に飛び込むも火勢の激しさや体力の消耗で
命を落とした人もかなりの数居たようだ。

序盤で田山花袋は代々木の自宅にほとんど被害がなく自分の家族が全員無事なのに
頻りに被害の大きかった地域を見に行こうと試みるのが不思議でたまらなかったが、
読み進んで行ったら、「ああ、なるほどw」と合点がいったw 気持ちがわからないことも
ないが相変わらずだなと思った。

不逞鮮人云々の話や自警団の過激化、自警団を装う追い剥ぎ連中、甘粕事件への言及も
あり、これもまた当時の状況を窺い知ることが出来て良かった。発展前の渋谷や東中野に
関する記述も、今読むと面白い。


当時の神奈川県の被災状況はよく知らなかったので、地震発生時に横浜沖に居た
船頭のUの話や箱根・熱海方面から避暑客達が歩いて東京都を目指した話は非常に
興味深かった。都内を目指して汽車のレール上を歩いて行く人々は救恤品として
"パンの一片や握り飯の一つや二つ"を入手することが出来たり、真鶴で動物を
採取していた外国人がそういった対応にえらく感激していたという話があり、
「昔から日本人はこういうところがあったんだなぁ(・∀・)」と妙な感慨を覚えた。

大磯の停車場や馬入川の鉄橋崩壊や横浜の被害状況、信濃坂については見知っている
場所だけにこれも興味深い記述だった。横浜の辺りも全滅に近い状況だったようで、
「そう言えば三渓園の原三渓が私財を投げ打って復興に尽力したんだっけか」と
ふと思い出した。


東海道線と異なり、東北方面の線路は被害がなく避難民が殺到したらしい。
震災当日とその翌日は制しても屋根の上にまで人が乗るような有り様で
それ以降は上野から大宮辺りまでは無蓋貨車で人を運んだようだ。

弘前在住の予備役中佐だった花袋の弟が召集され、上京/帰郷した際に見聞きした話では
上京時の列車内では不審人物のチェックがあり、帰郷時は混雑の為に難儀したとあった。
いずれの時も福島辺りまでは酷い混雑だったようだ。

花袋の兄・實が地震学の関谷博士に依頼され、「大日本地震資料」を編纂した絡みで
聞き知っていた、関谷博士の跡を継いだ大森房吉の話や活動写真好きのK翁の話も
読み応えがあった。


花袋をはじめ、当時の人々の中には江戸・明治時代から部分的に更新されて来た"東京"が
国際都市としては不十分と考えていた人も居たようで、この震災を機に新しい日本の首都と
して復興することを望んでいたが、"そこには歴史もあり由緒もあり伝統もあり利害も
あるに相違なかった。焼出されたものでも、出来るならば、元のところに帰って住みたいに
相違なかった。人の心の落附いて行くにつれて、次第に消極的の議論が出るように"なり、
"今では復興ということより復旧ということに重きを置かれるようになった”ようだ。

こんなにも新”東京”へ期待する花袋に対し、「でもどっちにしろ、東京大空襲で東京は
また焼け野原になっちゃうんだぜ(´・ω・`)?」と思いつつ読んでいたが、後の方の章で
花袋自らが『飛行機でもやって来る段にもなると、とてもこの地震の比ではないそうだね?
この東京などは、一度で滅茶々々になってしまうってね?』と話していて、そのことを
予見していたかのように思えて驚いた。まあこれは全てが確定した事象を知っている
人間が現在から見るから予見していたかのように思えるだけだけども。


田山花袋は百年近く前の時代の人だけれども、現在生きる人々と考えてることや
感じることに大きな違いがなく、その事は人間という生き物の限界とも不変性とも
言えるような物悲しいモノを想起させると同時に奇妙な親近感を抱かせてくれた。
そういう不思議な読後感も含めて、兎にも角にもこの本は興味深い、interestingな
面白さがある作品だった。

もっと色々と書こうと思っていたことがあったが忘れた(ノ∀`)
というか疲れたからもういいや。

東京夜の駆け込み寺

去年書いたエントリがまだ残ってた(ノ∀`)


酒井あゆみ(著)

ヘルス嬢、ホテトル嬢、企画AV女優、愛人、AV女優マネジメントを経験した著者が
出会った風俗嬢のお話集。当然のことながら基本的に明るい話はない。一見、話が
明るい感じで終わっていても、なんとなく不幸な結末が待っていそうに見える。

家族関係が崩壊したり、付き合ってる男に言われて性風俗産業に墜ちていくパターンが
ほとんどかな。家族から離れて帰る場所がないとか男に言われてとか、手っ取り早く
金を稼ぐ為に墜ちていく。


第4章の真弓[ヘルス嬢・元AV売れっ子女優]って誰だろう?
再会したのが写真撮影会で、その日のメインとして飯島愛の名前が上がっているので
1990年代前半の人か。

考えてみれば、AV女優史上、一番成功したと言える飯島愛ですら、あんな最期を
迎えたことを考えると、ほとんどのAV女優はもっと哀しい最期を迎えたりしてるんだろうか。
まあ表舞台に出ないような風俗の人は過去を隠したり、或いは納得の上で結婚した相手と
ひっそりと幸せに暮らしているのかもしれないけれども、その辺は観測出来ないので
何とも言えないな。


読後にやっぱり安易に性風俗や水商売に行かない方がいいんじゃないかなぁと
思いつつも、AV等にお世話になってる俺氏が言うことでもないなと考え直した(ノ∀`)

まるで風俗に行って射精後に賢者タイムに入り、真顔になって
「こんなことをいつまでもしてちゃいけないよ(`・ω・´)」と
説教をし始める親父みたいなもんだもんなw

おひとりさまの更年期―あなたを救う心と体の処方箋

田中 奈保美 (著)

基本的に閉経後の女性に訪れるものなので俺氏には無縁とも言える更年期ではあるが、昨今では男性にも更年期があるとかないとか言われているようなので、ちょっとだけ目を通すつもりで本を開いた。


序盤でかなりホルモン補充療法(HRT)推しなので、これはHRTを普及させることを目的な怪しい本なのかと邪推してしまった(ノ∀`)
(※)ブックパスの無料読み放題本は結構怪しい内容の物があるw

HRTでぐぐってみると、わずかではあるがその危険性について指摘しているページがあったので「ますますもって怪しい、これは読み進めるのは時間の無駄か( ・´ω・`)?」と思いつつも中年期のアイデンティティの危機について言及している部分に興味があったので、取り敢えず読み進めた。

そうしたら94ページからHRTに関する危険性について書かれた記事とその説明があり、後のページでもHRTが万能のものではなく、抗鬱剤や漢方薬等々、その人の症状と環境に合わせたものを選択・併用すべきであるという旨のことが書かれていたので、ここに来てようやく猜疑心の強い俺氏も本書は怪しくないであろうと判断した(・∀・)


読んだ感じでは、更年期障害というものは、中年期において湧き上がる今までの人生に対してのある種の迷い、身体能力の低下や親族や友人の死によって想起することを余儀なくされる生命や未来に対する不安、会社での重責による仕事のストレスに起因する精神的動揺と閉経というホルモンバランスの急激な崩壊によって引き起こされるモノのように思えた。

本書は閉経におけるホルモンバランスの変化自体を軽視しているわけではなく、今まで軽視され、見向きもされなかった精神的動揺にも注意を払うべきであると主張しているようだったが、多分それは正しいのかなぁと思った。

更年期障害というものの詳しい定義は知らないけれども、何にしてもそれは単にある年代の人達が訴えることの多い症状をおおまかにカテゴライズしてまとめた枠であり、必ずしもその中のモノ全てが単純かつ明確に1対1の原因と結果として対応はしているわけではない。そうした場合に、病気即ち身体的不調やホルモンのみが原因とするのは早計であり、他の原因要素との複合を疑うべきだろう。

多くの人は精神と肉体は全く別のもののように捉えているようだけれども、精神や思考は肉体上で発生している化学変化の集まりであり、肉体と相互に強く影響しあう。正確に言うならば精神は肉体の延長線上に存在するというか、脳の進化の結果として産まれて来た、あるいは自覚されたモノである。そうしたことを踏まえた場合にわかりやすいホルモンバランスの変化のみに注目していてもきっと更年期障害の問題は解決しないだろう。


素人考えではあるけれども、更年期障害と呼ばれる一連の事象において、本当に注目しなければならないことはホルモンバランスの変化よりも中年期におけるアイデンティの再構成の方なんじゃないのかなと思ったりもした。

男性には閉経はないし、ホルモンバランスの変化はあるとしてもそれほど大きいインパクトはないか、それによって不調を訴える人の数は少ない。

目に見えるほどの不調をもたらす大きいホルモンバランスの変化は必ずしも全ての人には訪れない。男女を問わず、より多くの人が体験するのは中年期のアイデンティティの再構成の方であろう。

そうしたことを踏まえると更年期障害と呼ばれる一連の事象は、実は青年期的若さの喪失またはその自覚、忍び寄る死への不安等によって生じる精神的動揺のトリガーであったり、危険信号の発報なんじゃなかろうかと言う風に思った。女性の場合は閉経という身体へのインパクトの大きいイベントを抱えてるが為にこれが生じやすく、その身体的不調に注目が集まっているだけで。


なんやかんやで色々と興味深い内容だった。症例の話はまあ「へぇ(・∀・)」というくらいの感想しかないけどw 中年期のアイデンティティ絡みの本を読みたくなった(`・ω・´)

まあしかしこの辺のこともきちんと考えた上で女性登用を進めないと、高齢の女性に対して”SHINE”は「輝け」じゃなくて「しね」ってことにもなりかねないよね。
無職の俺氏が昨今の政策に疑問を呈するのもなんだが(ノ∀`)

彡 ⌒ ミ
( ・∀・)< 夢は正SHINEになること!
              頭はSHINEしてるじゃん>(・ω・` )