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海の奇談

著者は庄司浅水。明治生まれの人なので言い回しが現代と違っていて
少し読み辛いというか、言葉の使い方が違うような気がした。
あと、漢字変換のルールが一定じゃないような気がした。波止場が漢字だったり、平仮名だったりしてたような。特に意味はないんだろうけど。

主な内容は

  • 海の怪獣の目撃、巨大海ヘビの捕獲
  • ベッツィ号、グレンドワー号、サンドウィッチ伯号、レニィ号、アビゲイル号での殺人事件や反乱
  • ボストン茶会事件
  • クジラに呑まれた男、長期漂流者
  • レギュレータ号、タイタニック号の遭難事故
  • グラーフ・シュペー号の最後

全体的に人物名や地名の羅列が多く、その辺はちょっと冗長かもしれない。

海の怪獣/巨大海ヘビに関しては今はともかく、昔は恐竜の生き残りみたいなのが居たんだろうかと思ってしまう目撃談が多いなぁ。実際はどうか知らないけどw

殺人事件や遭難事故の章を読むと船旅は恐ろしいという結論にしか辿り着けないw
タイタニック号事件なんて昔の話やと思っていたが、イタリアや韓国の海難事故を考えるとそうも言ってられないな。

タイタニック号に関してはあんまり知らなかったので唯一の日本人乗船者である細野正文にまつわる話は興味深かった。

意外と本編よりもミニコラムの短い話の方が面白かったな(・∀・)


確実に誤植等のミスだろうと思える部分が何箇所かあった。

P117
ベンスシ → ベンスン?
P145
フランズ → フランス
P157
ピーター。マッキンレー → ピーター・マッキンレー?
P189
反乱者の逮捕 → ボールド装飾?
P279
撃破きれた → 撃破された?
P283
立ち向こう → 立ち向かう?
P306
救いげあ → 救いあげ?


ぼちぼち面白かったけど、466ページということでちょっと長かったw

『網走番外地 南国の対決』を観た

網走番外地 南国の対決

竜神一家のために命を張って、網走刑務所に送り込まれた橘真一(高倉健)は、出所の日に先代親分が沖縄で事故死したことを知った。何か裏がありそうだ、そう考えた橘は直ちに沖縄へ向った。

北海編は面白かったけど、これはちょっと微妙だったな(´・ω・`)
もしかしたらこの作品の方がこのシリーズのデフォルトかもしれない。
高倉健、千葉真一、嵐寛寿郎、田中邦衛、由利徹、大原麗子とレギュラーっぽいメンバーがシリーズ作品と同名役または別役で出てた。

この反応は間違っているのかもしれないが、嵐寛寿郎演じる鬼寅さんが登場すると思わず笑ってしまうw 劇中で大活躍するのだけれども、この役どころは笑わせに来てるように感じるのだが、違うのだろうか(・∀・)

北海編の骨折母娘の話のように今作でも一郎(町田政則)の母親探しという、おそらく感動ポイントが配されていたが、結構どうでも良かったw  

公開年が1966年で、沖縄返還が1972年であることを考えると、この映画は海外ロケに分類されるのであろうか。劇中の町並みや交通は貴重な映像なんだなぁ。


網走刑務所はもはや回想シーンでしか出て来なかったw
第一作はどんな感じだったんだろうかとちょっと気になった。

『網走番外地 北海篇』を観た

網走番外地 北海篇

『網走番外地』シリーズの第4作。主人公・橘真一(高倉健)が走らせるトラックに乗り込む男女達の悲喜劇を串団子方式に見せ場の連続で描く。ジョン・フォード監督『駅馬車』をベースとしている。

特に期待せずに観たけれども、意外や意外面白かった(・∀・)
任侠物なのだと思ってみたが、任侠的要素はあったけれども普通の任侠物とはちょっと違う感じであった。どちらかと言うと「ギターを持った渡り鳥」系か。加えてこの作品はちょっと特殊だったのかもしれない。

弓子役の大原麗子が若くて可愛かった(・∀・)
最初の方はしっかりと観ていなかったので千葉真一には気づかなかったな。
橘に頼み事をしていた葉山がそうだったのか。
浦上役の杉浦直樹はちょっと渋かった。

刑務所内では11番(由利徹)と108番(砂塚秀夫)等の絡みや炊事班長 19番(山本麟一)のキャベツ食いとほとんどコメディーパートだったw 一応、鬼寅さん(嵐寛寿郎)の見せ場はあったけどw 途中で出てきたもう一人のオカマ 7番(吉野芳雄)は本当のゲイバーのママだったのか。

骨折母娘や心中娘、親分のけじめとイベント盛り沢山であったが、必須イベントであったかというとそうでもなかったかも。まあ一応みんな見せ場があるというか役割を消化している感じなので、なんだかなぁ感は控え目であったが。

終盤の鬼寅登場~ラストの展開はちょっと吹く。

まあ色々と面白かったな(・∀・)
昔ながらの音楽も良かった。

『浮草』を観た

浮草

1934年に松竹蒲田撮影所で製作した『浮草物語』を監督自らがリメイクした作品。宮川一夫撮影によるアグファのカラー映像が旅役者の世界の情緒を際立たせる佳作である。
(略)
旅回りの駒十郎一座の乗った船が港に着いた。駒十郎(中村鴈治郎II)は一膳飯屋にお芳(杉村春子)を訪ね、その昔二人がもうけた清(川口浩)も今では郵便局に勤めていると知って安心する。清には駒十郎はお芳の兄ということになっていた。

語れる程小津安二郎作品は観てないのだけれども、今まで観た系統とは違う感じでちょっと新鮮だった(・∀・)

正直、一座の劇の幕間までは退屈だった。
幕間で一座の男衆が品定めというか、ビラ配りの時に目をつけた島の女について話す辺りから面白くなっていったw

シミーズの女をあてがわれた男のぼやきや床屋のおかみさんの憮然とした態度と髭剃りの顛末など、非常にコミカルだった。

「秋日和」や「彼岸花」でもそうだったけれど、小津安二郎映画に出てくる男衆三人組はいつも下衆というかお馬鹿なのが面白くて好きだw
終盤の出来事は驚くと共にワラタw

物語は駒十郎の現在の連れ合いであるすみ子(京マチ子)が清とお芳の存在に気づくことからゆっくりと動き出す。すみ子が女の意地で自分の存在を強調しようとした結果、駒十郎になじられ、加代(若尾文子)を使って清にちょっかいを出させるんだけども、その時の加代の行動が中々洒落てる。
全然状況も内容も違うが「コレラの時代の愛」の1シーンを思い出した。


親方役の中村鴈治郎(2代目)は全く知らない。30年ちょい前に亡くなってるからか。

しかしこの頃になると関西歌舞伎の凋落がいちじるしく、鴈治郎自身も周囲の期待の重圧に自身の芸が伸び悩む。また三代目市川壽海を主とする興行方針をめぐる松竹との軋轢、さらには長男二代目中村扇雀(四代目坂田藤十郎)の松竹離脱もあって居場所を失う形となり、1955年(昭和30年)に松竹を離脱した。

とあり、この作品が1959年ということを考えると演者自体もやや浮草のような状態だったんだろうか。

貫禄というべきか迫力と言うべきかわからないが、京マチ子は非常に存在感があったなぁ(・∀・)
この時35歳か。色っぽかったな。劇中では痴話喧嘩ばっかりしていたイメージがある。

笠智衆もちょい役で出てたな、そういえば。


ラストは「男はつらいよ」の寅さん的なものを感じた。
同じ浮草稼業の所為かもしれない。

まあ何はともあれ小津安二郎が好きなら、この変わった味付けの作品も楽しく観れるのではなかろうか(・∀・)