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東京震災記 / 田山花袋

1923年9月1日に起きた関東大震災について、自身の体験や被災者から聞いた話を
まとめた作品。田山花袋と言えば、変態私小説「蒲団」のイメージしかなかったが、
この作品はとても興味深い内容であった。

こんなことを言うと田山花袋が墓から跳び出てきて思いっ切りぶん殴られそうだが、
随所に入る文学的表現や自作品からの引用等は読むのがちょっと煩わしかったw
その辺を考慮しつつ読むのであれば良い被災体験記であったと思う。


東京の下町方面や皇居周辺の地理は余り詳しくないので、今ひとつピンと来なかったが、
基本的にほぼ全部が焼失したのだけはわかった。持ち出した家財道具に執着したが為、
火災の広がりを甘く見たが為に命を失ってしまった人も大勢いたようだ。家財道具を
載せた大八車や多数の人間が橋などに集中し、身動きが出来ない状態になったまま
火の手に囲まれたらしい。火を避ける為に川に飛び込むも火勢の激しさや体力の消耗で
命を落とした人もかなりの数居たようだ。

序盤で田山花袋は代々木の自宅にほとんど被害がなく自分の家族が全員無事なのに
頻りに被害の大きかった地域を見に行こうと試みるのが不思議でたまらなかったが、
読み進んで行ったら、「ああ、なるほどw」と合点がいったw 気持ちがわからないことも
ないが相変わらずだなと思った。

不逞鮮人云々の話や自警団の過激化、自警団を装う追い剥ぎ連中、甘粕事件への言及も
あり、これもまた当時の状況を窺い知ることが出来て良かった。発展前の渋谷や東中野に
関する記述も、今読むと面白い。


当時の神奈川県の被災状況はよく知らなかったので、地震発生時に横浜沖に居た
船頭のUの話や箱根・熱海方面から避暑客達が歩いて東京都を目指した話は非常に
興味深かった。都内を目指して汽車のレール上を歩いて行く人々は救恤品として
"パンの一片や握り飯の一つや二つ"を入手することが出来たり、真鶴で動物を
採取していた外国人がそういった対応にえらく感激していたという話があり、
「昔から日本人はこういうところがあったんだなぁ(・∀・)」と妙な感慨を覚えた。

大磯の停車場や馬入川の鉄橋崩壊や横浜の被害状況、信濃坂については見知っている
場所だけにこれも興味深い記述だった。横浜の辺りも全滅に近い状況だったようで、
「そう言えば三渓園の原三渓が私財を投げ打って復興に尽力したんだっけか」と
ふと思い出した。


東海道線と異なり、東北方面の線路は被害がなく避難民が殺到したらしい。
震災当日とその翌日は制しても屋根の上にまで人が乗るような有り様で
それ以降は上野から大宮辺りまでは無蓋貨車で人を運んだようだ。

弘前在住の予備役中佐だった花袋の弟が召集され、上京/帰郷した際に見聞きした話では
上京時の列車内では不審人物のチェックがあり、帰郷時は混雑の為に難儀したとあった。
いずれの時も福島辺りまでは酷い混雑だったようだ。

花袋の兄・實が地震学の関谷博士に依頼され、「大日本地震資料」を編纂した絡みで
聞き知っていた、関谷博士の跡を継いだ大森房吉の話や活動写真好きのK翁の話も
読み応えがあった。


花袋をはじめ、当時の人々の中には江戸・明治時代から部分的に更新されて来た"東京"が
国際都市としては不十分と考えていた人も居たようで、この震災を機に新しい日本の首都と
して復興することを望んでいたが、"そこには歴史もあり由緒もあり伝統もあり利害も
あるに相違なかった。焼出されたものでも、出来るならば、元のところに帰って住みたいに
相違なかった。人の心の落附いて行くにつれて、次第に消極的の議論が出るように"なり、
"今では復興ということより復旧ということに重きを置かれるようになった”ようだ。

こんなにも新”東京”へ期待する花袋に対し、「でもどっちにしろ、東京大空襲で東京は
また焼け野原になっちゃうんだぜ(´・ω・`)?」と思いつつ読んでいたが、後の方の章で
花袋自らが『飛行機でもやって来る段にもなると、とてもこの地震の比ではないそうだね?
この東京などは、一度で滅茶々々になってしまうってね?』と話していて、そのことを
予見していたかのように思えて驚いた。まあこれは全てが確定した事象を知っている
人間が現在から見るから予見していたかのように思えるだけだけども。


田山花袋は百年近く前の時代の人だけれども、現在生きる人々と考えてることや
感じることに大きな違いがなく、その事は人間という生き物の限界とも不変性とも
言えるような物悲しいモノを想起させると同時に奇妙な親近感を抱かせてくれた。
そういう不思議な読後感も含めて、兎にも角にもこの本は興味深い、interestingな
面白さがある作品だった。

もっと色々と書こうと思っていたことがあったが忘れた(ノ∀`)
というか疲れたからもういいや。

東京夜の駆け込み寺

去年書いたエントリがまだ残ってた(ノ∀`)


酒井あゆみ(著)

ヘルス嬢、ホテトル嬢、企画AV女優、愛人、AV女優マネジメントを経験した著者が
出会った風俗嬢のお話集。当然のことながら基本的に明るい話はない。一見、話が
明るい感じで終わっていても、なんとなく不幸な結末が待っていそうに見える。

家族関係が崩壊したり、付き合ってる男に言われて性風俗産業に墜ちていくパターンが
ほとんどかな。家族から離れて帰る場所がないとか男に言われてとか、手っ取り早く
金を稼ぐ為に墜ちていく。


第4章の真弓[ヘルス嬢・元AV売れっ子女優]って誰だろう?
再会したのが写真撮影会で、その日のメインとして飯島愛の名前が上がっているので
1990年代前半の人か。

考えてみれば、AV女優史上、一番成功したと言える飯島愛ですら、あんな最期を
迎えたことを考えると、ほとんどのAV女優はもっと哀しい最期を迎えたりしてるんだろうか。
まあ表舞台に出ないような風俗の人は過去を隠したり、或いは納得の上で結婚した相手と
ひっそりと幸せに暮らしているのかもしれないけれども、その辺は観測出来ないので
何とも言えないな。


読後にやっぱり安易に性風俗や水商売に行かない方がいいんじゃないかなぁと
思いつつも、AV等にお世話になってる俺氏が言うことでもないなと考え直した(ノ∀`)

まるで風俗に行って射精後に賢者タイムに入り、真顔になって
「こんなことをいつまでもしてちゃいけないよ(`・ω・´)」と
説教をし始める親父みたいなもんだもんなw

邪神伝説シリーズ

矢野健太郎(著)

毛野楊太郎名義で鬼畜系H漫画を書いていたり「アオイホノオ」にも変なキャラで登場した
矢野健太郎の書いたクトゥルフ神話を題材にした漫画。

むかーし、友達がH・P・ラブクラフトのクトゥルフ神話が好きで小説やら
このシリーズの1巻の「ラミア」を貸してくれた。ファンタジーな神話が
好きなお子様な俺氏はクトゥルフ神話自体には大して興味を持たなかったが、
「ラミア」の方は面白かったのでいつか続きを読みたいと思っていたが、
いつの間にか忘れていた(ノ∀`)

ブックパスで無料読み放題をあさっていた時にあったので最後まで読んだ。


基本的には星間渚が主人公で、単身又はその相棒であるケイン・ムラサメと
組んでクトゥルフ案件を片付けていく感じ。渚が主人公ではない短編も
ちらほらとあった。

1988年辺りの作品で、やけに反原発な放射脳的なお話が多いなぁと思って
読んでいたが、チェルノブイリ事故やそれを扱った本に強く影響されていたらしい。
電子書籍化にあたり、この当時の回顧や現時点での作者の考えやその変遷が追加
されていて、それはそれで「ああ、なるほど」と思った。あえて黒歴史として
内容を改変しないというのは男らしいと言えば男らしい。

そうか、最後、ああいう落ちになるんかと思いつつ、
内容を完全には理解出来てない気がする(ノ∀`)

「CALL of CTHULHU」はワラタw


五冊あるので中々読み応えがあった(・∀・) ハイヨルコントン

『ニュージーランドの若大将』を観た

ニュージーランドの若大将

1969年1月に公開された若大将シリーズ社会人篇『フレシュマン若大将』の第2弾として同年7月に公開した本作は、前作の続篇的な設定で日東自動車のサラリーマンとして恋に仕事に活躍する若大将を描いている。
(略)
田沼雄一(加山雄三)は2年間のオーストラリアの駐在生活を出勤前にシドニー湾でクルージングするなどエンジョイしていたが、急遽本社の日東自動車からの命令で帰国することになる。帰国早々の空港でライバル会社が出迎えた外国人を追おうとして偶然にニュージーランド産業振興会に勤める森川節子(酒井和歌子)と同じタクシーに乗り合う。

考えてみると今回は節子との出会いの時に恋愛ポイントはなかったな。
今作はなんとなく理由なく恋仲になるような感じに思えた。前作に続きタクシーで出会うというパターンだったが、タクシー乗車が社会人を表していた時代なんだろうか。

日本語堪能なエリザベス役のジェシカ・ピーターズって日本向きな可愛い感じだったのに、この一作しか出てない模様。節子を勘違い・嫉妬させるキャラのもう一人は中山麻理。高橋かおりと不倫した三田村邦彦の元奥さんか。

同僚は前作同様、岡田可愛。小物感丸出しの上司も前作同様、藤岡琢也。取締役の佐野周二って関口宏の父ちゃんか。序盤に出てくる太田黒代議士を演じたコロムビア・トップってこの作品の五年後に本当に参議院議員になったのかw

久太郎(有島一郎)の恋バナ絡みではうつみ宮土理となべおさみが出て来た。
やはり久太郎の恋バナは定番なのか。

お婆ちゃん(飯田蝶子)が「歳を考えなさいヽ(`Д´)ノ」と叱るシーンでニヤッとした。
「それはばーちゃんの方だろ(・∀・)」とw

戸外へ出てからの雄一と久太郎のシーンはなんだか渋いというか重厚なシーンに見えた。その後の歌でがっくり来るがw

青大将(田中邦衛)は相変わらずで、久しぶりにヒロインへのレイプ未遂もどきシーンがあった。そこから一気にラストへ行ってしまうので、やはりちょっと物足りない。お婆ちゃんと久太郎不足(´・ω・`)

そういえばジョン・オハラと中央モータースはそんなにストーリーに本質的には関わってこないんだなw 結局、新車キャンペーンで巻き返したということになったのかな?


どうでもいいけど、

折から、雄一のところに本社から帰国命令がきて、名山と共に帰国した。
ニュージーランドの若大将

"名山"じゃなくて"石山"じゃないのかな?